人が羨ましくて心が揺れた時。
その感情の奥には、自分でもまだ気づいていない願いが隠れていることがあります。
けれども、いざ、
「私は、その人の何が羨ましかったのだろう」
「本当は、どうしたいのだろう」
と自分に問いかけても、何も浮かんでこないことがあります。
誰かに、
「あなたは、どうしたい?」
と聞かれた時、答えが出てこない。
嫌なわけではないけれど、心から望んでいるのかも分からない。
考えれば考えるほど、
「普通は、どうするものなのだろう」
「どちらを選べば、後悔しないだろう」
と、正しい答えを探し始めてしまう。
そんな時、
「私には、自分の意見がないのかもしれない」
「自分のことなのに、どうして分からないのだろう」
と、不安になることがあります。
けれども、自分の気持ちが分からないのは、気持ちがないからとは限りません。
自分よりも周りの状況を先に考えることが続き、心の小さな反応を受け取る機会が少なくなっていることがあります。
本音は、最初からはっきりした言葉で現れるとは限りません。
小さな違和感や、身体の反応、なぜか気になるという感覚として現れることもあるのです。
この記事では、自分の気持ちが分からなくなる理由と、本音に気づくための5つの問いをお伝えします。
自分の気持ちがわからなくなるのは、なぜ?
私たちは毎日の中で、さまざまなことを考えています。
- 今は何をするべきか
- 相手はどう感じるか
- 家族にとって何がよいか
- 失敗しないためにはどうすればよいか
- 一般的には、どちらが正しいか
どれも、生活していくうえで大切な視点です。
周囲をよく見て考えられることは、その人が身につけてきた力でもあります。
ただ、外側に答えを探すことが習慣になると、
「私は今、どう感じている?」
「私は、本当はどうしたい?」
という自分への問いが、後回しになりやすくなります。
その結果、何かを選ぶ場面になって初めて、自分の気持ちが見えなくなっていることに気づくのです。
気持ちより先に「正しい答え」を探してしまう
例えば、何かに誘われた時。
本当は少し気が進まなくても、
「せっかく誘ってくれたから」
「断ったら申し訳ないから」
と考え、引き受けることがあります。
新しいことを始めたいと思った時も、
「今から始めても遅い」
「役に立つことを選んだ方がよい」
と、浮かんだ気持ちをすぐに判断することがあります。
この時、心の中には一瞬、
「今日は休みたい」
「少しやってみたい」
という反応があったかもしれません。
けれども、その直後に「でも」「普通は」「今さら」という考えが重なると、最初の小さな気持ちは見えにくくなります。
本音がないのではなく、本音より先に判断する習慣が身についているのかもしれません。
「考えていること」と「感じていること」は違う
自分の気持ちを知るうえで、まず分けておきたいものがあります。
それは、「考えていること」と「感じていること」です。
例えば、
「もっと頑張らなければならない」
は、感情ではなく考えです。
その考えの奥には、
- 焦っている
- 不安を感じている
- 悔しい
- 認めてもらえず寂しい
などの感情があるかもしれません。
また、
「もう、どうでもいい」
という言葉の奥に、疲れや悲しさ、分かってもらえない寂しさが隠れていることもあります。
頭に浮かんだ言葉だけで結論を出さず、
「この考えの奥で、私は何を感じているのだろう」
と立ち止まることで、心の反応に近づきやすくなります。
本音は、大きな夢とは限らない
「本音を知る」と聞くと、
「本当にやりたい仕事は何か」
「これから、どんな人生を生きたいか」
という大きな答えを見つけなければならないように感じるかもしれません。
けれども、本音はもっと日常的なものです。
- 今日は静かに過ごしたい
- 今は答えを出したくない
- 少し手伝ってほしい
- 本当は寂しかった
- 一度だけ試してみたい
- これは好きではない
このような小さな感覚も、すべて自分を知る手がかりです。
最初から人生の答えを見つけようとすると、かえって分からなくなることがあります。
まずは、今この瞬間の小さな気持ちを受け取るところから始めてみましょう。
言葉にならない時は、身体の反応を見てみる
気持ちを言葉にすることが難しい時は、身体の感覚が手がかりになります。
- 胸がざわざわする
- 喉が詰まる感じがする
- 肩やお腹に力が入る
- ほっとして呼吸が深くなる
- なぜか身体が前に向く
- その場から少し離れたくなる
身体の反応だけで、すぐに答えを決める必要はありません。
ただ、
「私は今、何かに反応している」
と気づくことが大切です。
気持ちが分からない時も、心や身体からのサインが、完全になくなったわけではありません。
小さすぎて、まだ言葉になっていないだけかもしれないのです。
本音に気づくための5つの問い

自分がどうしたいのか分からなくなった時は、次の5つの問いを順番に見てみてください。
すべてに、きれいに答えなくても大丈夫です。
一つでも心に引っかかる言葉があれば、そこから始められます。
1.何がありましたか?
まず、起きた出来事を短く書きます。
「知人から誘いを受けた」
「家族に意見を聞かれた」
「誰かの投稿を見た」
ここでは、よい・悪いを決めず、起きたことだけを見ます。
出来事と、自分の評価や想像を分けると、心の反応を整理しやすくなります。
2.その時、身体はどのように反応しましたか?
胸、喉、お腹、肩、呼吸などに意識を向けます。
「少し胸が重くなった」
「身体に力が入った」
「なぜか、ほっとした」
何も分からなければ、「よく分からない」でも構いません。
正解を出そうとせず、今気づける範囲を見てみます。
3.どんな感情に近いでしょう?
身体の反応を手がかりに、感情を探します。
- うれしい
- 不安
- 寂しい
- 悔しい
- 怖い
- ほっとする
- 疲れている
- 少し嫌だ
一つに決められない時は、
「うれしいけれど、不安」
「やってみたいけれど、怖い」
と、複数の感情があっても大丈夫です。
相反する気持ちが同時にあることは、珍しいことではありません。
4.本当は、何を望んでいましたか?
感情の奥にある願いを見てみます。
「少し考える時間がほしかった」
「気持ちを分かってほしかった」
「自分で決めたかった」
「今は休みたかった」
「何をするべきか」ではなく、
「私は、どうだったら少し安心できるだろう」
と考えると、願いを見つけやすくなります。
5.今の自分にできる、小さな選択は何ですか?
本音に気づいても、すぐに大きく生活を変える必要はありません。
- 返事を明日まで待ってもらう
- 今日は一つだけ予定を減らす
- 気になることを少し調べる
- 「私はこう感じている」とメモに書く
- 今は何も決めない
本音を尊重するとは、必ず希望どおりに行動することではありません。
事情があって、望んだ選択ができない日もあります。
それでも、
「本当は、こう感じていたんだね」
と自分が分かってあげることはできます。
自分の気持ちを置き去りにしないことが、自分へ戻る小さな一歩になります。
すぐに答えが出なくても大丈夫
これまで周囲の状況を優先してきた人にとって、自分の気持ちを聞くことは、慣れていない作業かもしれません。
問いかけても、最初は何も浮かばないことがあります。
そんな時に、
「また分からなかった」
「私は、自分のことさえ分からない」
と責めなくて大丈夫です。
「分からない」と気づいたことも、自分の内側へ意識を向けた証です。
日常の小さな場面で、
「少し心地よい」
「これは少し違う気がする」
という反応を拾っていくと、自分の感覚が少しずつ見えやすくなります。
本音は、考えて掘り当てる答えというより、自分の反応を丁寧に受け取りながら育てていくものなのです。
自分の気持ちに気づくことが、自分軸の始まり
自分軸とは、いつでも迷わず、自分の意見を貫くことではありません。
周囲の考えも聞きながら、
「私は今、こう感じている」
「私は、これを大切にしたい」
と、自分の気持ちも同じ場所に置いて考えられることです。
そのためには、最初から正しい答えを出すことよりも、どんな気持ちがあるのかを知ることが欠かせません。
自分の気持ちが分からなくなった時は、答えを急ぐ前に、心や身体の小さな反応へ戻ってみる。
その積み重ねが、周囲の正解だけではなく、自分が納得できる選択へつながっていきます。
TRIAL SESSION
一緒に整理してみませんか
自分のことを考えようとしても、
周りの意見や正しい答えばかりが浮かび、
本当の気持ちが見えなくなることがあります。
本やSNSで問いに取り組んでも、
「これが本音なのか、自分でも分からない」
と迷うこともあります。
個別セッションでは、
今どこで心が止まっているのか、
どんな考えが気持ちを見えにくくしているのか、
心や身体がどんな反応をしているのかを、
一緒にゆっくり整理していきます。
すぐに正しい答えを出すためではありません。
自分の本音に気づき、
自分が納得できる選択へ進むための時間です。
[第1回|人が羨ましくて苦しくなる時|比較で揺れる心から、本音を知る方法]

自分の気持ちに気づいても、相手の反応を考えると、つい周りに合わせてしまうことがあります。
次の記事では、自分の気持ちを後回しにしてしまう理由と、周りに合わせる習慣から自分へ戻る方法を考えていきます。
[第3回|に合わせてしまうのはなぜ?自分の気持ちを後回しにしないために]


